SIGMAのDP2Merrillが発売されて3週間が過ぎました。
DP2Merrillはインタフェース的にはCFより遅いSDが採用されていますが、なぜか高速なCFを使ったSD1Merrillより書込速度が速いです。
なぜでしょうか?
まずは、SD1Merrillに採用されているTrueIIは、元々コンパクトデジタルカメラ用に開発されたチップであり、そのためSDカードを使用することを想定して設計されています。
もちろんTrueIIと名乗るためにSIGMAの要望に沿って多少のカスタマイズは行われていますが、CPUコアやDSP部、またIFブロックを全てSIGMA専用に再設計するのはSIGMA製デジカメの出荷台数を考えればほぼ無理であろう事は容易に想像ができます。
実際、TrueIIが一番最初に採用されたDP2はSDカードでしたよね?
そのあとに登場したSD15も形状はSD14とほとんど変わらなかったのに、記録メディアはSDに変更されていました。
この事から、TrueIIに搭載されている外部メディア用インタフェースはほぼ間違いなくSDであると推測して間違いないと思います。
そのため、CFを使うには変換チップを経由して書込を行う必要があります。
対して、DP2MerrillはSDインタフェースに直接接続可能です。
この余計な物が入らない分高速に書き込みが出来るのです。
たとえば、SD→CF変換アダプタが売っているので試してみると分かりますが、どんなに高速なSDを使っても10MB/sしか出ません。
実際、SD1MerrillはSunDiksのExtremePROを使っても実書き出し速度は3MB/sをやや超える程度です。
画像処理や各種制御を考慮すれば、変換チップを経由したらこのぐらいの速度になる事は十分考えられます。
あるいは、信頼性重視のチューニングが施されているため、わざと遅めにしている可能性もあります。
どちらにしろ、変換チップをかましている分、大幅に遅くなっていることは容易に想像できます。
対するDP2Merrillは、同じくSunDiksのExtremePROを使えば、7MB/sぐらい行きます。
TrueII自体、既に旧世代にプロセッサになりつつあることを考慮しても、各種制御や変換処理を行いながらも7MB/sも出せるのは、処理に無駄がない=直接書き込みできるためと予想できます。
もしCFに直接書き込めるのであれば、ファームウェアの改善で処理の効率を改善することで、高速なCFの方が早く書き込みできるようになるはずです。
または、遅くともDP2Merrill程度の書き込み速度は出せるはずです。
しかし、DP2Merrillが発売された後に出た最新のファームを入れてもそのような改善はみられません。
これは、事実上ファームの改善では書き込み速度を上げることができないことを表しています。
よくCFはスピードを早くするために採用、そのためSDになると遅くなると言われていますが、私は必ずしもそれだけではないと思っています。
上記の事実が示すことは、速度が目的でCFにしたのではなく、信頼性の問題でCFにせざるを得なかったということです。
スピードを出したければ、SD用のインタフェースにSDカードを直に繋いだ方がオーバーヘッドが無い分早いのは確実です。
しかしそれができなかったのは、おそらくSD1は信頼性の問題からSDが使えなかったのでしょう。
RAWにしたら45MBにも達する巨大なデーター、さらに2台のTrueIIはフル稼働。
しかもSD1はSIGMAのフラグシップ機で当初の価格設定から業務用途を目指さざる得ず、その結果一般向けを上回る信頼性が必要されたものと推測されます。
最近のSDはスピードも非常に速くなっていますが、度重なる規格変更や仕様追加で等で色々な仕様が混在し、その結果信頼性はそれほど高くありません。
また、SDはCF以上にメーカーやブランドが混在し、非常に混沌としている状況です。
このような仕様が多岐に存在するメディアで信頼性を確保することは、非常に難しいでしょう。
また、SD専用のインタフェースと言っても、SDに対するすべての相性を解決できるという意味ではありません。
専用インタフェースを付けても相性が発生するときは発生するのです。
対するCFは利用機会が限られることもあり、メーカーもブランドもSDほど多くありません。
また、CF用のコントローラーを製造するメーカーも数が出ない分さほど多くないので、動作確認やその調整はSDに比べれば難しくありません。
たびたび仕様が変更追加されるSDに対し、IF的に枯れているATAを通信規格にしたCFの方が、メディア自体の信頼性も、バスインタフェースの信頼性も圧倒的に上です。
元々信頼性が要求された業務用途のATAフラッシュカードの小型版として企画、開発されたメディアですので、信頼性は同等以上に確保されています。
故に信頼性を必要とされるプロ機で採用され続けているわけです。(もちろんスピードの違いもありますが。)
SD1の内部では、SDとCFの変換部分は内部で短い配線で繋がれている事と、何が繋がれるか分かっているので、それに対して調整するだけで済むために、内部での信頼性は十分以上に確保できます。
また、変換チップから見ればSD側は相手が考慮してくれますので、CFとの通信のみ気にすればいいだけで済みます。
もともと種類の少ないCFと相成って、非常に高い信頼性を維持できます。
そのため、CF自体の信頼性もあり、十分な信頼性を確保できます。
もちろんCFでも相性問題は発生しますが、このクラスのカメラを使う人であれば変なメーカーのメディアは使用しないでしょうから、事実上問題にはならないはずです。
変なメディアが使われても、ATAはソフトウェアで制御されているので、速度を落としたり通信規格を下位の規格に変更したりして、通信を続行できる可能性もあり、これも信頼性の高さに一役買っています。
そのため、フラグシップ機のSD1には、あえて高速になるSDではなく、鈍足でも信頼性が得られるCFを採用せざる得なかったのだと思います。
SD1MerrillはSD1のセンサーを換えただけなので、本体や内部の電子回路はそのまま流用になっています。
そのため、価格が安くなり一般人でも手に入れやすくなったにもかかわらず、SDに変更できなかったのです。
しかし、本体を安くしたのだから安価なSDを使いたいという要求もあるでしょう。
なので、恐らく次期のSD2ではSD化してくるのではないでしょうか?
それでも、信頼性の都合でSDシリーズはCFが継続される可能性もあります。
その際は、もう少し速度を改善できるようにしていただけたらと思います。
SD1Merrill自体は良い機体だと思いますが、やはりそのCFのスピードはネックになると思います。
ハード的に変換しているとなるとファームアップで高速化出来る可能性ありませんので、恐らくこれが限界でしょう。
事実DP2Merrill発売後のファームアップで実証してしまいました。
可能性として、TrueIIの汎用IOを制御してわざわざCFインタフェースを作っており、処理スピードが足らずに遅くなっている可能性も否定はしません。
しかし、信頼性が必要とされたSD1でそんな不具合の温床になりそうで、かつ処理を食い尽くしそうな面倒な処理を実装する可能性は低いので、この可能性は極めて低いでしょう。
それに、それであればファームアップでCFのスピードを上げることは不可能ではありませんが、今回のファームアップでCFのスピードが上がったという話は聞きませんので、これはなさそうです。
もちろん、今回CFインタフェースの部分はいじらなかったのでスピードが改善しなかったという可能性は否定しませんが、その可能性自体が極めて低いでしょう。
まとめると、
CF化はスピードが目的ではなく、信頼性の確保が主目的。
TrueIIは、元々コンデジ用チップのカスタム品のためSD用インタフェースを持っており、SDメディアに対する書き込みはけっこう早い。
しかし、信頼性確保のため、CFを使わざるを得ない。
そのCFには変換チップをかます必要があるため、オーバーヘッドで遅くなる。
ハードが原因のためファームでは改善できない。
となります。
※この内容は各種情報に基づく管理人の予想であり、実際の内容を断定する内容ではありません事をご了承願います。